〈50〉予防接種に出かけよう 命守るため必要不可欠
2020年7月8日 琉球新報
新型コロナウイルスの新規感染者数や死亡者数がテレビで流され、外出自粛を強く促される日々を過ごしていると、保護者が「こんな時に予防接種に行ってはいけないのでは」と考えてしまうのは、日常の診療から容易に想像ができます。
しかし、もう少し深く考えてみてください。数は少ないですが、日本でもまだ子どもたちがワクチンで予防できる病気(VPD)に感染して、重い後遺症で苦しんだり、命を落としたりしています。
世界に目を向けると、はしかで14万人(2018年)、百日咳(ぜき)で16万700人(14年)の小児が1年間で亡くなっていると推定されています。これらの多くはワクチンで予防できるのです。
まだ不十分ですが、日本で現在、接種率が上昇したはしかでの死亡者数はゼロです。接種率が低かった1990年代までは、死亡者数は毎年10~20人ほどでした。
百日咳も予防接種が一時中断されていた70年代には、年間20例以上の死亡がみられました。その多くは乳児です。VPDの中の一部の例で説明していますが、他のVPDでも同様なことが言えます。
一方、新型コロナウイルス感染症では現在までの状況から、小児が重篤化するリスクは低いと推測されています。6月24日現在で、10歳未満の感染者数287人で、うち重症者は1人、死亡者は0人で、大人と比べて少ない状況です。そんな中、子どものワクチン接種を控えても大丈夫なのでしょうか?
新型コロナウイルス感染症の問題に直面している現在、私たちはどんな気持ちで今を踏ん張っているのでしょうか。早くワクチンが開発されるように祈っていませんか? 世界中に数多くある感染症の中で、ワクチンで防げる病気はわずかです。防げる病気だけでも予防して、大切な子どもたちの命を守りたいものです。
小児にとってワクチン接種は不要不急ではありません。必要不可欠な医療行為です。予防接種に出かけましょう。
(安里義秀、あさとこどもクリニック 小児科)